2025年12月10日
カフェ-ヒコチコ 近藤俊彦さん
営業は不定期です。詳細はインスタグラムをご覧ください。
cafe-hicochiko
Instagram @hico_chico
埼玉県所沢市北中3丁目94−8
西武新宿線新所沢駅から徒歩30分。西武池袋線小手指駅から徒歩30分。住宅地と畑がせめぎ合うようなところにカフェヒコチコがある。ヒコチコはテイクアウト専門のカフェで、一軒家の庭に建てた小さな小屋がお店である。店先に置いた二人掛けのベンチがひとつ。運が良ければそこで座ってコーヒーを飲んでいけるかもしれないが、多くのひとは持ち帰るかカップを片手に立ったまま店主と談笑している。
店主の近藤俊彦さんはもともと飲食店に勤めていた経験がある。現在は飲食業から離れた職業についているが、飲食の仕事がしたいとずっと思っていた。それで一番ハードルが低く始められる飲食業はなにかと考えた末にキッチンカーをやることにした。キッチンカーを始めるに当たって調べてみると食材を調理する調理場が必要らしい。なんでも自動車の中で完結できるわけではないようだ。そこでその調理場として庭に小屋を作ることにした。小屋のガワは小屋キットとして売っているものだが内装はすべて自分で作り上げた。リフォームの仕事を手掛けているだけあって、水回りの工事もすべて自分でやったという。
キッチンカーを持ったはいいが、さてどこへ出そうか?よく公園などパブリックなスペースでキッチンカーを見るが勝手に出していいものではないらしい。ところが公園の管理者に聞くと出店については管轄外であると言われてしまう。困った。それからよくよく調べてみるとキッチンカーの出店をまとめているところがあることがわかった。そうしてようやく出店に漕ぎつけた矢先にコロナ禍である。
公園への出店はおろかイベントはことごとくキャンセルされてしまった。それで近藤さんは考えた。どこへも行けないのなら自宅でお店を開こう。この調理スペースとして建てた小屋をカフェにしよう。駅から遠く離れた住宅地のど真ん中だ。しかし近藤さんは果たしてお客さんは来るのかとは考えなかった。だってここでやるしかないのだから。
近藤さんはとりあえず自分でやってみようと考えるひとである。コーヒーの焙煎もやってみた。業務用の焙煎機もなく手探りでやってみた。焙煎とは要するに炒ることである。家庭用のガスとフライパンだってできるはずだ。見様見真似でやってみた。できるにはできるが、味にムラが出る。うまくいくときといかないときの差が大きいのだ。自分で飲む分にはいいがお金をもらうにはいまひとつと判断した近藤さんは自家焙煎をあっさりと諦めて焙煎した豆を仕入れることにした。
立川に近藤さんがカフェ開きのノウハウを学んだカフェがあって、そこで焙煎してもらった豆を仕入れている。お店で出しているのは二種類で深煎りのhikosukeブレンド、浅煎りのhicochikoブレンドがある。近藤さんがテイスティングを繰り返して完成した自慢のコーヒーだ。近藤さんはそのお店でスコーン作りも学んで手作りスコーンも出すことにした。そしてこのスコーンがいまやヒコチコの顔になっている。
スコーン作りは教えてもらったのだけど家でやったら上手くできなくて試行錯誤したのちにようやく今のスタイルに落ち着いた、と近藤さんは言う。ヒコチコのスコーンは本場イギリスのスコーンというよりはアメリカのカフェに出てきそうなスコーンである。大きいし、ゴツゴツとして、食べ応えがある。チョコレートやナッツ、ドライフルーツなど5,6種類用意されているから全種類まとめ買いするひともいるほどスコーンが人気だ。コーヒー屋として始めたのにスコーン屋になってしまったと近藤さんは言うが、スコーンは小学校のイベントに呼ばれるほど子どもたちにも好かれている。やっぱりあの大きさがいい。小腹が満たせる以上の満足感が老若男女を虜にするのだろう。
スコーン以外にもキッシュやチーズケーキ、タコライスなどを作っているときもあるがお店の開店日が不定期なのと同じようにあるときとないときがあるからそれらが目的の場合は事前に問い合わせたほうがよい。
そう。ヒコチコは近藤さんの複業であり本業が別にある。お店は月に4,5回大体週末に開く。ときどきイレギュラーで平日に開けることもある。開店情報はインスタにのみ上げているので行きたい場合は事前チェックは欠かせない。こんな変則的な営業でしかも駅から離れた住宅地にあってひとは来るのか。来るのである。
お客さんの多くは近隣の住民である。散歩をしているとスコーンののぼりがたっている。こんなところになにかしら。あらカフェがあるわ。といった具合で立ち寄ってくれる。そこから口コミで広がってきたという。自宅にカフェをオープンしてからもキッチンカーでのイベント出店は続けていて、そのイベントで買ってくれたお客さんがわざわざ来てくれることもあったという。そんなふうにしてカフェヒコチコは少しずつ広まってきた。今では開店を楽しみにまっている常連客もついてきた。その先へ、近藤さんはカフェヒコチコにこんな願いを込める。
このカフェでお客さん同士が知り合いになってくれたら面白いだろうな。地域のコミュニケーションの場になったら素敵だろうな。と考えている。近藤さんが描くヒコチコの未来は決して行列のできるスコーン屋さんではない。地域に末永く愛される小さなカフェでありたいのだ。好きな音楽を流してゆったりと過ごし、お客さんと会話して、お客さん同士が会話して、やさしい時間が流れる場所にしたいのだ。